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8.3 The derivative
この節で,はで,開集合とする.
8.3.1 The derivative
において,
が存在するとき,それをのにおける微分係数というのだった.微分係数が存在すると仮定すると,
が成立する.であることに着目すると,はの近くでを近似する線形作用素と言える.この考えを多次元の場合に拡張する.
Definition 8.3.1
とする.
がでdifferentiable(微分可能)
とか,と書き,をのにおけるderivativeという(訳語は色々あるが,微分係数か,単に微分と呼ぶことにする).がで微分可能なとき,単にはで微分可能であるという.
とする操作を微分するという.が存在するならそれは一意(Prop 8.3.2)だから,
は関数と考えることができて,の導関数と呼ぶ.
Proposition 8.3.2.
について,で,がともにのにおける微分係数なら,である.
proof.
ここで,とするとであり,,最左辺は,と書ける.
の作用素ノルムがだから,,したがって.
Proposition 8.3.5.
がで微分可能なら,はで連続である.
proof.
略
Theorem 8.3.6 (Chain rule)
, open. であって,
はで,はで微分可能で,それぞれの微分係数をとするとき,
はで微分可能で,その微分係数はである.
proof. 略
8.3.2 Partial derivatives
Definition 8.3.7
について,
が存在するとき,をのにおけるに対するpartial derivative(偏微分係数)という.
であるとき,のにおけるに対する微分係数をと書く.
Proposition 8.3.8
がで微分可能であるとき,
であるが,これをの標準基底を使って表現するとき,
と書ける. これは
ということでもある.
であるとき,
である.
proof.
を固定する.
において,微分可能性より右辺はに近づく.よって
が成立する.と書くとすると,
が存在して,に等しい.
一方で,それぞれの偏微分係数が存在しても,が微分可能であるとは限らない.
8.3.3 Gradient and directional derivatives
が微分可能とする.のgradient(勾配)を
と定める.はナブラと読む.
が成立する.(行列ベクトルとベクトルベクトル)
が微分可能でであるとき,このような関数とその像をcurve(曲線)という.とすると,
が定義できて,は微分可能である.
が成立する.
にある点が速度でベクトル方向に移動しているとき,の変化率を考える.
とすると,これはその点の軌跡を表す曲線であって,である.
であって,そのchain ruleから
が成立する.最左辺をと書くことにする.
とすると,Cauchy-Schwartzの不等式から
統合はがの定数倍である時成立し,
である.このように,gradientはある関数が最も早く増大するような方向を向いている.
8.3.4 The Jacobian
Definition 8.3.9
が微分可能であるとする.このとき,のJacobian(ヤコビアン)を,
と定める.Jaobianは
と書かれることがある.行列式が幾何学的に面積や体積を表すのと同様に,Jacobianは写像がの元をに写すとき,もとの元に比べて像はどれほど引き伸ばされたり,押しつぶされているかの指標になる.
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