2017年6月29日木曜日

Basic Analysis (Jiri Lebl) 31日目

CC BY-NC-SA 3.0

8.3 The derivative

この節で,で,開集合とする.

8.3.1 The derivative

において,

が存在するとき,それをにおける微分係数というのだった.微分係数が存在すると仮定すると,

が成立する.であることに着目すると,の近くでを近似する線形作用素と言える.この考えを多次元の場合に拡張する.

Definition 8.3.1

とする.
differentiable(微分可能)

とか,と書き,におけるderivativeという(訳語は色々あるが,微分係数か,単に微分と呼ぶことにする).で微分可能なとき,単にで微分可能であるという.

とする操作を微分するという.が存在するならそれは一意(Prop 8.3.2)だから,
は関数と考えることができて,の導関数と呼ぶ.

Proposition 8.3.2.

について,で,がともににおける微分係数なら,である.
proof.


ここで,とするとであり,,最左辺は,と書ける.
の作用素ノルムがだから,,したがって.

Proposition 8.3.5.

で微分可能なら,で連続である.
proof.

Theorem 8.3.6 (Chain rule)

, open. であって,
で,で微分可能で,それぞれの微分係数をとするとき,
で微分可能で,その微分係数はである.
proof. 略

8.3.2 Partial derivatives

Definition 8.3.7

について,

が存在するとき,におけるに対するpartial derivative(偏微分係数)という.
であるとき,におけるに対する微分係数をと書く.

Proposition 8.3.8

で微分可能であるとき,
であるが,これをの標準基底を使って表現するとき,

と書ける. これは

ということでもある.
であるとき,

である.
proof.

を固定する.

において,微分可能性より右辺はに近づく.よって

が成立する.と書くとすると,

が存在して,に等しい.

一方で,それぞれの偏微分係数が存在しても,が微分可能であるとは限らない.

8.3.3 Gradient and directional derivatives

が微分可能とする.gradient(勾配)を

と定める.はナブラと読む.
が成立する.(行列ベクトルとベクトルベクトル)
が微分可能でであるとき,このような関数とその像をcurve(曲線)という.とすると,
が定義できて,は微分可能である.

が成立する.

にある点が速度でベクトル方向に移動しているとき,の変化率を考える.
とすると,これはその点の軌跡を表す曲線であって,である.
であって,そのchain ruleから

が成立する.最左辺をと書くことにする.
とすると,Cauchy-Schwartzの不等式から

統合はの定数倍である時成立し,

である.このように,gradientはある関数が最も早く増大するような方向を向いている

8.3.4 The Jacobian

Definition 8.3.9

が微分可能であるとする.このとき,Jacobian(ヤコビアン)を,

と定める.Jaobianは

と書かれることがある.行列式が幾何学的に面積や体積を表すのと同様に,Jacobianは写像がの元をに写すとき,もとの元に比べて像はどれほど引き伸ばされたり,押しつぶされているかの指標になる.

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